最終更新日:2024年12月30日
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RUEC

日本のエネルギーコストの今を把握する

コスト意識のタガが外れた脱炭素政策は、日本経済の負担するエネルギーコストを膨張させています。再エネの年コスト負担は、FIT法が導入された2012年当時の想定の7倍にも膨らみました。電力市場は弥縫策を続ける電力システム改革により複雑怪奇なものとなり、再エネ普及のための賦課金や容量拠出金など、日本経済の総合的な負担は見えづらいものとなっています。エネルギー環境政策の失敗を国民が負うべき理由はありませんが、現在の直接・間接の負担とともに、次の追加的負担が準備されていることを国民も知らなければなりません。2028年以降でも、GX賦課金などによりエネルギー価格の高止まり・高騰がほぼ確約されています。 エネルギーのコスト負担は、ミクロでは電気料金などの価格情報から観察されますが、マクロでの負担総額を政府統計から知るようになるには数年のタイムラグがあります。ECMでは、現行政策による価格・コストおよび生産量への影響をタイムリーに把握していくため、直近の速報値とともに、今年の予測値を毎月公表しています。

2023年の負担総額は51.0兆円となり、コロナ禍前から12.2兆円の負担増

RUEC 単位:兆円/年。注:観測期間は2015年–2023年。図のシャドー部分は補助金推計値。 括弧内は直接負担に、補助金による間接負担を含めたエネルギーコスト負担総額(最終エネルギー消費)。 2024年値は、2024年11月実績値(ECM推計)までを反映した予測値。
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  • 2024年は、負担総額としては2023年から1.5兆円減少し、直接負担額はほぼ横ばいとなる見通し。
  • Time_series
    単位:10億円。注:括弧内は最終エネルギー消費額に占めるコストシェア。2024pは2024年11月実績値(ECM推計)までを反映した年次予測値。

    転換される燃料を含めると、2023年には75.9兆円、コロナ禍前から17.7兆円の負担増

    RUEC2 単位:兆円/年。注:観測期間は2015年–2023年。電力などの二次エネルギーへの転換に利用されるLNG(液化天然ガス)や石炭など一次エネルギーのコストを含めたベース。2024年値は2024年11月実績値(ECM推計)までを反映した年次予測値。

    月次では、FIT賦課金の拡大、補助金の終了に伴い、直接負担は拡大傾向へ

    RUEC3 単位:兆円/月。注:観測期間は2015年1月–2024年11月(季節調整済み)。図のシャドー部分は補助金推計値。 括弧内はそれを含めた補助金による抑制前エネルギーコスト(最終エネルギー消費)。2024年12月–2025年6月値は予測値。
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  • 2024年11月の最終エネルギー消費額(エネルギーに対する補助金による抑制後)は3.8兆円と、2022年4月水準まで抑制。ただし補助前消費額では4.0兆円。
  • エネルギーに対する補助金としては、「燃料油価格激変緩和対策事業」(2022年1月–2024年12月消費分に対する補助)、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」(2023年2月–2024年6月検針分に対する補助)、 「酷暑乗り切り緊急支援」(2024年9月–2024年11月検針分に対する補助)、さらなる電気・ガス料金の負担軽減策(2025年2月–2025年4月検針分に対する補助)を考慮している。 政府は2024年以降も「燃料油価格激変緩和対策事業」を継続するとしているが出口に向けて段階的に対応するとしており、 2025年1月は2023年平均補助率、2月–3月はその半分、4月以降は補助金の終了を仮定した。
  • 2022年12月のピークを下回るが、2024年2月からは再上昇し、11月以降もエネルギーコスト負担は高止まりの見通し。 2024年後半期(7月–12月)でもコロナ禍以前の2019年平均値を20%上回り、2025年前半期(1月–6月)には26%上回る見通し。
  • 各種予測値について、2024年12月以降の実質GDPおよび名目GDPは、OECD Economic Outlook(2024年12月4日公表)に基づく。 2024年12月のガソリン、軽油、灯油価格は、資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(2024年12月25日公表)の小売価格に基づく。 それ以外のエネルギー種および11月以降は、U.S. EIA Short-term Energy Outlook(2024年12月10日公表)における原油、天然ガス、石炭価格予測に基づく。 なおエネルギー消費量の予測では、ECMにおける主体別の(グロス)エネルギー生産性の過去のトレンドを反映している。
  • ECM_JPN_202412は、①ECM推計値の2024年11月までの更新、②各国の2025年6月までの予測値を追加、③ドイツのエネルギー価格の予測では、 2025年1月より引き上げられる炭素税分(CO2排出量1トン当たり45ユーロから55ユーロへ上昇)を反映。
  • ここでのエネルギーコストは、卸・小売マージンや運輸コストを含まない評価による。
  • Time_series
    単位:10億円。注:括弧内は最終エネルギー消費額に占めるコストシェア。

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