最終更新日:2024年7月14日
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RUEC

日本のエネルギーコストの今を把握する

コスト意識のタガが外れた脱炭素政策は、日本経済の負担するエネルギーコストを膨張させています。再エネのコスト負担は、FIT法が導入された2012年当時の想定の7倍にも膨らみました。電力市場は弥縫策を続ける電力システム改革により複雑怪奇なものとなり、再エネ普及のための賦課金や容量拠出金など、日本経済の総合的な負担は見えづらいものとなっています。エネルギー環境政策の失敗を国民が負うべき理由はありませんが、現在の直接・間接の負担とともに、次の追加的負担が準備されていることを国民も知らなければなりません。2028年以降でも、GX賦課金などによりエネルギー価格の高止まり・高騰がほぼ確約されています。 エネルギーのコスト負担は、ミクロでは電気料金などの価格情報から観察されますが、マクロでの負担総額を政府統計から知るようになるには数年のタイムラグがあります。ECMでは、現行政策による価格・コストおよび生産量への影響をタイムリーに把握していくため、直近の速報値とともに、今年の予測値を毎月公表しています。

2023年の負担総額は52.3兆円となり、コロナ禍前から13兆円の負担増

RUEC 単位:兆円/年。注:観測期間は2015年–2023年。図のシャドー部分は補助金額。 括弧内は直接負担に、補助金による間接負担を含めたエネルギーコスト負担総額(最終エネルギー消費)。 2024年値は、2024年5月実績値(ECM推計)までを反映した予測値。
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  • 2024年は、負担総額としては2023年から0.5兆円減少する見通しだが、直接負担額は1.3兆円増となる見通し。
  • Time_series
    単位:10億円。注:括弧内は最終エネルギー消費額に占めるコストシェア。2024pは2024年5月実績値(ECM推計)までを反映した年次予測値。

    転換される燃料を含めると、2023年には77.9兆円、コロナ禍前から19兆円の負担増

    RUEC2 単位:兆円/年。注:観測期間は2015年–2023年。電力などの二次エネルギーへの転換に利用されるLNG(液化天然ガス)や石炭など一次エネルギーのコストを含めたベース。2024年値は2024年5月実績値(ECM推計)までを反映した年次予測値。

    月次では、FIT賦課金の拡大、補助金の終了に伴い、直接負担は拡大傾向へ

    RUEC3 単位:兆円/月。注:観測期間は2015年1月–2024年5月(季節調整済み)。図のシャドー部分は補助金額。 括弧内はそれを含めたエネルギーコスト(最終エネルギー消費)。2024年6月–12月値は予測値。
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  • 月次エネルギーコストとしてピークとなる2022年9月には補助前消費額ベース(ECM推計値)の4.8兆円から、「燃料油価格激変緩和対策事業」(2022年1月–2024年12月消費分に対する補助金)により、 補助後消費額ベースでは4.5兆円にまで抑制。(現在、政府は年内まで補助を継続するとしている。ECM_JPN_202406では7月–9月では2023年平均の補助率、10月–12月ではその半分を仮定している。)
  • 化石燃料価格の低下とともに「電気・ガス価格激変緩和対策事業」(2023年2月–2024年6月、9月–11月検針分に対する補助金)により、2024年5月の最終エネルギー消費額は4.1兆円と、 2022年6月水準まで抑制(ただし補助前消費額ベースでは4.4兆円と、2022年5月水準と同等)。
  • 最終エネルギー消費額に対する補助金総額では2022年に2.7兆円、 2023年に4.6兆円(うち電力2.2兆円、石油製品1.8兆円、ガス0.7兆円)。
  • 各種予測値について、2024年6月以降の実質GDPおよび名目GDPは、OECDのEconomic Outlook(2024年4月23日公表)に基づく。 2024年6月のガソリン、軽油、灯油価格は、資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(2024年6月26日公表)の小売価格に基づく。 それ以外のエネルギー種および6月以降は、米国EIA(エネルギー情報局)のShort-term Energy Outlook(2024年6月11日公表)における原油、天然ガス、石炭価格に基づく。 エネルギー消費量では、実質GDPの成長率と主体別の(グロス)エネルギー生産性改善の実績値を考慮した推計値による。
  • ECM_JPN_202406では、電力・ガスは補助金の復活により9月から11月まで継続するとし、補助金の価格指数としての対応月を電力使用月から検針月に1か月後ろ倒しになるよう調整をおこなっている。
  • ECM_JPN_202406a では、国土交通省「建設総合統計」の遡及改定による JSNA2 次速報(改定値)の公表(2024 年 7 月 1 日)に伴い、その名目・実質 GDPの四半期ベンチマーク推計値の改訂を行っている。
  • ここでのエネルギーコストは、卸・小売マージンや運輸コストを含まない評価による。
  • Time_series
    単位:10億円。注:括弧内は最終エネルギー消費額に占めるコストシェア。

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