日本のエネルギーコストの今を把握する
脱炭素政策は日本経済の負担するエネルギーコストを膨張させています。再エネの年コスト負担は、FIT法が導入された2012年当時の想定の7倍にも膨らみました。電力市場は弥縫策を続ける電力システム改革により複雑怪奇なものとなり、再エネ普及のための賦課金や容量拠出金など、日本経済の総合的な負担は見えづらいものとなっています。2028年以降でも、GX賦課金などによりエネルギー価格の高止まりが予想されます。エネルギーのコスト負担は、ミクロでは電気料金などの価格情報から観察されますが、マクロでの負担総額を政府統計から知るようになるには数年のタイムラグがあります。ECMでは、現行政策による価格・コストおよび産業空洞化への影響をタイムリーに把握していくため、直近の速報値とともに、今年の予測値を毎月公表しています。
2024年の負担総額は48.2兆円となり、コロナ禍前から10.1兆円の負担増
単位:兆円/年。注:観測期間は2015年–2024年。図のシャドー部分は補助金推計値。
括弧内は直接負担に、補助金による間接負担を含めたエネルギーコスト負担総額(最終エネルギー消費)。
2025年値は2025年2月実績値(ECM推計)までを反映した年次予測値。
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2024年は、負担総額としては2023年から1.6兆円減少し、直接負担額は0.5兆円減少。
単位:10億円。注:括弧内は最終エネルギー消費額に占めるコストシェア。
転換される燃料を含めると、2024年には71.2兆円、コロナ禍前から13.5兆円の負担増
単位:兆円/年。注:観測期間は2015年–2024年。電力などの二次エネルギーへの転換に利用されるLNG(液化天然ガス)や石炭など一次エネルギーのコストを含めたベース。
2025年値は2025年2月実績値(ECM推計)までを反映した年次予測値。
月次では、FIT賦課金の拡大、補助金の終了に伴い、直接負担は拡大傾向へ
単位:兆円/月。注:観測期間は2015年1月–2025年2月(季節調整済み)。図のシャドー部分は補助金推計値。
括弧内はそれを含めた補助金による抑制前エネルギーコスト(最終エネルギー消費)。2025年3月–12月値は予測値。
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2025年2月の最終エネルギー消費額(エネルギーに対する補助金による抑制後)は3.8兆円と、2022年5月水準まで抑制。ただし補助前消費額では4.0兆円。
エネルギーに対する補助金としては、「燃料油価格激変緩和対策事業」(2022年1月以降の消費分に対する補助)、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」(2023年2月–2024年6月検針分に対する補助)、
「酷暑乗り切り緊急支援」(2024年9月–2024年11月検針分に対する補助)、さらなる電気・ガス料金の負担軽減策(2025年2月–2025年4月検針分に対する補助)を考慮している。
また政府は2025年6月以降、「燃料油価格激変緩和対策事業」による補助額を拡充するとしており、2025年4月–5月は3月分の補助と同等、
2025年6月–12月は(4月6日の共同通信の記事等に基づき)1リットルあたり10円を仮定した。
2022年12月のピークを下回るが、エネルギーコストの負担は2024年2月から再上昇し、2025年2月以降も高止まりの見通し。
2024年後半期(7月–12月)でもコロナ禍以前の2019年平均値を19%上回り、2025年前半期(1月–6月)には18%上回る見通し。
各種予測値について、2025年3月以降の実質・名目GDPは、OECD Economic Outlook (2024年12月4日公表)に基づく。
2025年3月のガソリン、軽油、灯油価格は、資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(2025年4月2日公表)の小売価格に基づく。
それ以外のエネルギー種および3月以降は、U.S. EIA Short-term Energy Outlook (2025年3月6日公表)における原油、天然ガス、石炭価格予測、
U.S. EIA Spot Prices for Crude Oil and Petroleum Products (2025年4月2日公表)における原油価格に基づく。
なおエネルギー消費量の予測では、ECMにおける主体別の(グロス)エネルギー生産性の過去のトレンドを反映している。
ECM_JPN_202503は、
①2025年2月(EITE指標は2025年1月)までの更新、②2025年12月までの予測値を公表。
ここでのエネルギーコストは、卸・小売マージンや運輸コストを含まない評価による。
単位:10億円。注:括弧内は最終エネルギー消費額に占めるコストシェア。
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