エネルギー多消費産業の非対称性
パンデミック後のエネルギー多消費(EITE)製造業の生産には、国際的に非対称な推移がみられる。2026年5月の生産水準は2015–19年平均に比べ、日本で19%、ドイツで18%、韓国で16%低い。一方、中国では24%、インドでは77%高く、パンデミック前からの拡大が続いている。こうした跛行性は、エネルギー価格や需要環境に加え、各国のエネルギー・環境政策の強度やタイミングとの関係にも注意を促す。
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パンデミック後のエネルギー多消費(EITE)製造業の生産には、国際的に非対称な推移がみられる。2026年5月の生産水準は2015–19年平均に比べ、日本で19%、ドイツで18%、韓国で16%低い。一方、中国では24%、インドでは77%高く、パンデミック前からの拡大が続いている。こうした跛行性は、エネルギー価格や需要環境に加え、各国のエネルギー・環境政策の強度やタイミングとの関係にも注意を促す。
2026年の日本経済のエネルギーコスト負担は51.6兆円と、2015–19年平均の36.9兆円を14.7兆円上回り、2022年に記録したピーク(50.3兆円)を超える見通しである。2022年以降、負担はコロナ禍前を大きく上回る水準が続いており、2026年はその水準からさらに切り上がる。米エネルギー情報局の予測(2026年8月)では、原油価格は年末にかけて緩やかな低下傾向にあるものの、2025年末比では2割以上高い水準にとどまる。加えて11月からの託送料金の引き上げとその電気料金への反映が見込まれ、年末にかけて高水準が継続するとみられる。ここでの負担額は、家計・企業が直接支払う48.5兆円に、補助金として税等を通じて負担される間接分を加えたものである。直接負担額でみても、2022年の47.6兆円を0.9兆円上回る。
2026年7月、日本の原油輸入量に占める米国のシェアは36.3%に達し、2015年1月以降で初めてサウジアラビア・アラブ首長国連邦(UAE)を上回り最大の輸入先となった。背景には、2月末のイスラエル・米国によるイラン攻撃を契機としたホルムズ海峡の航行不安があり、日米間では原油調達拡大に向けた協力を確認している(3月の日米首脳会談)。CIF輸入単価は主要供給国いずれも上昇している。しかし、危機下でこれほど急速に調達先を切り替えられた経験は、平時の供給網強化や価格交渉における資産となる可能性がある。
エネルギー多消費(EITE)製造業の生産は日本・ドイツともに低下し(EM2601)、2026年6月には2015‒19年平均を2割ほど下回る。しかし、輸入の動きは非対称である。輸入指数は同月に日本が1.04、ドイツが0.89と、2015‒19年平均対比で逆方向に動いている。輸入指数を生産指数で除した輸入生産比指数も、日本1.28、ドイツ1.10まで乖離した。日本の輸入は2024年に入ってから増加傾向が明確となっており、ホルムズ危機以前から確認される動きである。ほぼ同程度の生産減少が、日本では輸入増加を、ドイツでは輸入減少を伴っている。この非対称は、生産減少の大きさだけでは説明できず、日本のEITE製造業における国内供給と輸入との関係に構造的な変化が生じている可能性を示している。
主要国では、最終エネルギー消費における電力と非電力エネルギーの相対価格が2015年以降大きく分岐している。2024–25年平均の電力相対価格指数(2015年平均=1)は、英国1.28、ドイツ1.18と上昇した一方、中国では0.68、インド0.82、日本0.84まで低下した。こうした差は、電力と非電力の選択をめぐる価格シグナルが国によって大きく異なることを示している。2026年6月には多くの国でさらに低下したが、これはホルムズ危機発生後の石油製品を中心とする非電力エネルギー価格の上昇を反映している。
主要9か国では、2015年以降の電力相対価格と電力化率の変化に一定の対応がみられる。EM2605で示したように、2026年にはホルムズ危機後の非電力エネルギー価格上昇によって多くの国で電力相対価格が大きく低下しているため、本号では危機前の2025年平均で比較する。2015年から2025年にかけて、アジア4か国ではいずれも電力化率が上昇し、とくに中国、インド、日本では電力相対価格が低下する一方、電力化率はそれぞれ20.2%から27.9%、17.5%から20.1%、26.0%から29.1%へ上昇した。これに対しドイツでは、電力相対価格が上昇するなかで電力化率は19.6%から19.3%へと低迷し、比較9か国で最も低い水準となっている。
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